目的
建物の高気密、高断熱化により、省エネルギーが達 成された一方、 内部結露等（木材の腐食、カビの発生）の問題が生 じ始めた。
内部結露が深刻である北海道のような寒冷地では、 木造建物に防 湿シートを施すことにより、内部結露防止に役立っ ている。
しかし日本は気候の地域差が大きいため、各工法が それぞれの地 域の気象条件にふさわしいかどうかを確認する必要 がある。
そこで、本研究では住宅省エネルギー基準 1) の各地域区分ごとに、 木造建物の壁体内部湿気性状を明らかにすることを 目的とし、 非定常熱湿気同時移動解析を実施した。
1)住宅に係るエネルギーの使用 の合理化に関する建築主の判断と基準, 同設計及び 施工の指針; (1999/3)
解析方法
非定常解析プログラム
WUFI（ヴーフィ） Pro 4.1 for Japan: フラウン ホーファー建築物理研究所を使用した。
このプログラムは建築部位の水蒸気及び液水移動、 日射および雨の影響を考 慮した上で、非定常の1次元熱湿気同時移動が解析で きる 2)
解析条件
- 解析期間3年間
- 建物向き南向き
- 建物高さ10mまでの高さの戸建を想定
- 初期値各地域平均湿度の各建材の含水率及 び平均温度
2)H.M. Kunzel; Aussen dampfdicht, vollgedaemmt? Die rechnerische Simulation gibt Hinweise zu dem Feuchteverhalten aussen dampfdichter Steildaecher; bauen mit holz; (1998)
室内温湿度設定
最高28℃、60%RH、最低20℃、30%RHになるような サインカーブに設定した。最高温湿度をが8月15日に 示すように設定した。
対象地域気象条件
対象都市はI地区から札幌市、II地区から弘前市、盛 岡市、III地区から仙台市、長野市、IV地区から新潟 市、金沢市、東京、V地区から宮崎市、VI地区から那 覇市の10都市を選択した。
拡張アメダス気象データ（日本建築学会編）を元に WUFI用に変換したプログラム搭載データを用いた。
壁体断面構造モデル
壁体断面構造モデル
屋外側から外装仕上、通気層、透湿防水層、合板 12.5 mm、ロックウール(要項ではグラスウールと書 きましたが物性値はロックウールのものを使いまし たので訂正します）100 mm、I地区では150 mm、ポリ エチレン製防湿シート、石膏ボード9.5 mmとした。
防湿シートを設置する場合としない場合を比較し た。
物性値
各建材の密度（kg/m3）、空隙率（m3/m3）、比熱（J/kgK）（表中の熱容量の記載は比熱に訂正）、熱伝導率（W/mK）、水蒸気拡散抵抗係数（-）を示した。
