WUFIとは
ドイツ語では Wärme Und Feuchte Instationärと表記し、頭文字を取ってWUFIという名称となっています。Wärmeは熱、Undはand、Feuchteは湿気、Instationärは非定常を意味します。ここではドイツ語風に「ヴーフィ」と発音することにしています。
英語では Transient Heat and Moisture、日本語では詳しく、またもれなくWUFIの特徴を表現するために「非定常熱湿気同時移動解析プログラム」という長い名前がついています。
WUFIはドイツのフラウンホーファー建築物理研究所(IBP)により開発された「複層からなる建物部位の熱湿気性状を実際の気象条件を考慮して把握するため、水蒸気拡散・液水輸送の知見に基づいて作られたプログラム」で、欧米で標準的に広く使われているソフトウェアです。 (水蒸気拡散・液水輸送の知見については論文「Simultaneous Heat and Moistue Transport in Building Components.」(IBPキュンツェル博士):IBPサイト(英語)参照)
WUFIでわかること
WUFIでは具体的に以下のようなことがわかります。
- 屋根や壁構造における熱湿気性状
- 建物構造内部でのカビや結露の発生の危険性
- 建材内部の湿気の乾燥時間
- 建物の外周部における雨の影響
結果として様々な変数が得られ、中でも主に「湿気性状の観点から見てその工法が適切かどうか」の判断に用いる変数は以下のようなものがあげられます。
- 各建材及び壁体(屋根)断面全体に含まれる含水量
- 任意の点の相対湿度、温度
- 任意の日付の構造体内温度、相対湿度、含水率分布
また壁体断面の熱湿気性状が経時的にビジュアルに見ることのできる動画機能は直感的に分かる非常に優れた機能だと思います。
WUFIはWindowsであればどのバージョンでもインストールが可能です。
物性値の入力
WUFIでは壁体・屋根に用いられる建材の充実したデータベースがあるため、建材を選択し、厚みを入力するだけで壁体構造を設定することができます。また、任意の物性値を入れることも可能であるため、開発素材などでは、測定値を入力することでより実際に近い結果を得ることができます。
水蒸気拡散抵抗や吸水係数は日本ではあまりなじみのない物性値ですが、一般的な建材であればデータベースの物性値を用いることができます。しかし、特定の建材を用いてシミュレーションを行う際には、実測データを使用するべきです。必要であれば測定が可能です(イーアイではIBPへの試験依頼を仲介します)。
最低限必要な物性値
下にあげる5物性値は最低限必要な物性値です。
- 密度 Density (kg/m3):空隙部分も含めた単位体積あたりの質量
- 空隙率 Porosity (m3 /m3):材料の全体の体積に対する気泡体積の割合
- 熱容量 Heat Capacity( J/kg・K):1kgの建材が1度温度上昇するのに必要なエネルギー
- 熱伝導率Thermal Conductivity (W/mK):1度の温度差がある状態で1mの厚みを通り抜ける熱流量
- 水蒸気拡散抵抗係数(-) Water Vapour Diffusion Resistance Factor :
建材の透湿抵抗が、同じ厚さの空気層の抵抗と比べて何倍あるかという指標。
日本で透湿率(湿気伝導率)として用いられるμ(ミュー)とは異なる物性値
透湿性や保水性のある材料が含まれる場合には、さらに以下の物性値も必要です。
湿気・水分について詳しく調べるための物性値
- 相対湿度が80%RHの時の平衡含水率(場合によっては95%RHも)(kg/m3)
- 飽和状態における平衡含水率(kg/m3)
- 吸水係数A値(ドイツではw値):建材を水に浸した際に単位時間(秒の平方根)に吸収した水の量 (kg/m2s0.5)
WUFIに必要な気象データ
WUFIが広く用いられている欧州、北アメリカの気象データはソフトウェアの地図から選ぶことができます。日本の気象データは拡張アメダス気象データ(日本建築学会編)をWUFI形式に変換したものを読み込むことができます。
- 気温
- 相対湿度
- 水平面直達日射量
- 天空日射量
- 大気放射量
- 降水量
- 風向
- 風速
- 大気圧
その他に以下の地理データが必要です。
- 経度
- 緯度
- 気象データ測定点の標高
投稿者 外断熱コンサルタントのイーアイ: 2006年01月26日|ページの 先頭へ|