私が修行をしている研究所の省エネルギー部門では、長年、「いかにして住宅で使うエネルギーを少なくするか」ということに取り組んでいます。
その基本となる考え方をひとつ、暖房期を例にしてここに紹介します。
考え方は、家計と同じです。つまり、入ってくるお金と出て行くお金を比べて、いかに入ってくるお金を多くし、出て行くお金を少なくするか、ということです。
ここでは、お金を「エネルギー」と言い換えます。
(しかし、エネルギーも”光熱費”として実際には私たちは買っています。つまり「出て行くエネルギーが多い」ということは、「無駄にお金を使っている」ことに通じるのです。と言うと、省エネルギーの住宅は環境のためだけではなく、まさに自分のフトコロのためであり、真剣さも増します。実際に、ドイツで省エネルギー住宅をよびかける雑誌には、図1のような挿絵があり、ドキっとしました。)
図1.気密性・断熱性の悪い窓からエネルギー=お金!が逃げていく
図2は、冬のエネルギーバランスの例です。得るエネルギー(in)は「太陽からの熱」、「室内で発生する熱」、「暖房器具からの熱」です。反対に失うエネルギー(out)は「換気によって逃げる熱」、「壁や屋根などの建物外周から逃げる熱」です。この得るエネルギーの合計は、失われるエネルギーの合計と常に等しくなると考えます。
図2. バランスの考え方
省エネルギーにするための課題は、「暖房器具からの熱」をいかに少なくするか、ということです。そのために具体的に何ができるかというと、例えば、、、、
得るエネルギー(in)を増やす
■ 「太陽からの熱」をもっと多く取り入れる
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- 日中はカーテンなどを開け、積極的に日差しを取り入れる。
- ソーラーシステムを導入する。
■ 「室内で発生する熱」を多くする
→
- 「室内で発生する熱」とは、照明器具やテレビなどの家電製品が発する熱です。わざわざこれらの熱を多くするのは省エネルギーの視点から見ると本末転倒ですので、特に対策はありません。
失うエネルギー(out)を減らす
■ 「壁や屋根などの建物外周から逃げる熱」を少なくする。
→
- 建物の断熱を十分に行う。
- 一般的に壁や屋根よりも熱を逃がしやすい部分である窓には断熱性のいいものを用いる。
■ 「換気によって逃げる熱」を少なくする
→
- 建物の気密性をよくする。
- 最近では「熱回収装置」なるものが大きな効果を上げています。これは、室内の空気と室外の空気を交換する際に、室内の暖まった空気が持つ熱を、外からの冷たい空気に渡してから外に排出する装置です。
それでは、上記のような対策を行った場合にどうなるかということを簡単にグラフで示すと、図3のようになります。このような図は、ドイツでは省エネルギー住宅を開発したり、省エネルギー改修を行う時に、よく報告書に記されます。この図では、“省エネルギーな住宅”は、「太陽熱」および「室内発熱」の条件は同じでも、高気密、高断熱によって換気による熱損失や、壁や屋根から逃げる熱を少なくした結果、必要な暖房エネルギーが“普通の住宅“よりも少なくてすむ、ということが分かります。
図3. 普通の住宅と省エネルギーの住宅のエネルギーバランス
このエネルギーバランスの考え方は、日本でも十分、省エネルギー住宅の計画をする際に道しるべとなります。
また、日々の生活の中でも、この考え方を頭の隅においておくと、換気をするタイミングやカーテンの開閉のタイミングが分かりやすいのではないでしょうか。