Vol. 9 ドイツからの便り Eri通信 「一次エネルギーとは」

最近はだんだんと日も長くなり、真っ暗だった朝8時の出勤時にも、とても爽やかな朝の景色が見られるようになりました。雪も溶けはじめ、「春が近づいたなぁ」と思い始めた矢先、ここHolzkirchenは先週末、また白銀の世界に逆戻りしました<写真>。うっかり車も外にとめられません。いつかここに、草原に咲く花の写真を載せることのできる日を首を長~くして待っている今日この頃です。

雪景色
<写真:こんなに雪が降りました。>

では、本題に入ります。

前回のVol.8で、「一次エネルギー」について少し触れました。

<表1>は、ドイツの工業規格(日本で言うJISに相当します)に定められている、一次エネルギーの換算係数です。この係数を使うと、エネルギーの種類によらず、実際に消費した一次エネルギーの量を知ることができます。

(使用したエネルギー量)×(一次エネルギー係数)=(消費した一次エネルギー量)

表1.燃料の一次エネルギー係数

エネルギーの種類一次エネルギー係数
燃焼系係数
石油1.1
天然ガス1.1
液化ガス1.1
石炭1.1
0.2
地域暖房係数
燃焼系燃料0.7
再生可能燃料 0.0
電力係数
電気3.0

例えば石油だと、石油の採掘から家庭に届いて使用されるまでの、次のような各工程で必要なエネルギーの合計が、一次エネルギーとして考慮されます。

  1. 1. 採掘
  2. 2. 採掘した場所から、精油する工場までの輸送エネルギー
  3. 3. 精油に必要なエネルギー
  4. 4. 精油した工場から家庭までの輸送エネルギー
  5. 5. 石油の燃焼

つまり、例えば家庭で10MJ(メガジュール)のエネルギーを使用したとすると、長い目で見ると実際には11MJ(10MJ×1.1)のエネルギーを消費したことになります。

これが、先週ご紹介した「木質ペレット」だと、一次エネルギー係数は0.2となります。つまり、10MJのエネルギーを使用したとすると、実際には2MJ(10MJ×0.2)のエネルギーを消費したと考えられるのです。

なぜ少なくなるのでしょうか?不思議な感じがします。

それは、木が“再生可能な”燃料だからです。つまり、木を燃焼してエネルギーとして用いても、木はまた再生するので、「消費してなくなった」とは考えないのです。

一方、石油やガスは、何百年もかかって作られるものなので、“再生可能”とは言えません。現に、「石油はあと何年もつか!?」ということがよく話題になっていますね。

よって、木質ペレットの一次エネルギーには、木質ペレットの成形に必要なエネルギーと、輸送に必要なエネルギーのみが「消費してなくなった」と考えているのです。

以上が、一次エネルギーの考え方です。

しかし、<表1>だけを見て採用するエネルギーを決めるのは間違いです。

表1だけを見ると、電気がとても「悪い」エネルギー源だということになってしまいますね。

実際にはそんなことはなく、最初にも書いたように、消費する一次エネルギー量は、

(使用したエネルギー量)×(一次エネルギー係数)=(消費した一次エネルギー量)

で決まります。

例えば、エアコンなどに使われている「ヒートポンプ」というシステムでは、電気を使用すれば、ガスを使用する時よりも、必要な電力量はガスの約1/3程度ですみます。よって、一次エネルギー係数が約3倍であっても、消費する一次エネルギーの量にはあまり差がありません。

Vol.1で紹介した「住宅のエネルギーパス」には、断熱性や気密性などの家の造り方だけではなく、暖房や給湯のためのシステムの評価も含まれています。日本では、「家は家」「設備は設備」と別々に評価されがちですが、ドイツではそれらをまとめて総合的に評価を行うのが普通なのです。この「住宅のエネルギーパス」に関してもっと詳しい内容を記した記事が、IBEC(財団法人 建築環境・省エネルギー機構)の機関誌No.153(http://www.ibec.or.jp/tosyo/book01.html)に掲載されています。

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