Vol.87 スウェーデンからの手紙 高齢者むけの住宅の建設をより進める建築業界で湿気にからんだ大きなスキャンダルが発生する

2008年4月20日 スヴェンスカダーグブラーデット紙

通風口をつけなかった数万戸の建物の施工をしなおさなければならない

現在までのスウェーデンの建築業界の最大のスキャンダルが発覚しつつある。数万戸もの新築住宅の施工をしなおさなければならないだろう。発泡スチロールのボード(EPS)をモルタルで外装した住宅は、湿気を壁の中に閉じこめてしまい、こういった問題に対処するには数10億Krもの経費がかかることになる。

いわゆる ワン ステップ方式という、発泡スチロールのボード(EPS)をモルタルで外装した、通風口がつけられていない住宅でのスキャンダルが増加している。まだ、現状ではスウェーデン国内でどの程度の住宅のオーナーが被害を受けているかははっきり判明していない。しかし、この10年間ほどの間に建設された少なくとも25000戸の住宅で湿気問題が発生する危険性がある。

「正直なところ、私は予測したくありませんが、NCCだけでも5000戸も建設しました。国内には、さらに4つの大手の建設会社といくつもの小規模の会社があります。皆が同じ技術を使ったのです。」と、ルンド大学の建築技術学部のケネス サンデイーンは語っている。

計測調査をした結果では、国内で今までに調査された(ワン ステップ方式で建築された)ほぼ全部の建物500棟が湿気により損傷を受けていることが判明している。ストックホルムのリーデインゴーのゴースハーガ ストランドでは、スカンスカ建築会社は、66棟の高級一戸建て住宅を改修しなければならない。イエテボリでは、ノッラエルブストランデン地区の新築住宅にカビが発生している。

最も被害が大きいのは、ルンドのアンネへムス地区だ。2003年から2007年にかけて、NCCが建築した175棟の住宅が湿気による損傷を受けている。最初、NCCは建築現場の職員が手抜き工事を行ったので問題が発生したのであり、ワン ステップ方式そのものは信頼できるものだと主張していた。

しかし、現在では、これらの住宅のNCCは改修作業の費用を支払っているが、少なくとも改修には2年はかかり、一戸あたりの改修費用は40万から60万Kr程度かかる予定だ。同時にNCCはモルタル外装に10年間の保証をつけることにした。こういったプロセスは、業界各社から非常に注目されている。それは、NCCはやや信頼性にかける工法が使用されたと正式に認めた最初の建築会社だからだ。

工学博士のIngemar Samuelssonはスウェーデンの工学研究所に勤務しているが、長い間、ワン ステップ方式について警告していた人だ。現在、Samuelsson博士は、NCCが結成した専門家チームに所属している。このチームの結成目的は湿気による損傷が建物内に広がることを阻止し、オーナーの経済的損失があまり大きくならないようにすることだ。

Ingemar Samuelssonも、何軒程度の家が間違った工法により建築されているかの予想をしたがっていない。

「私達はいくつもの調査を実施中ですが、その件に関しては発表することが出来ません。」

Samuelsson博士は、今回のスキャンダルとの比較として莫大なロスがでたスウェーデンでの建築スキャンダルについて話している、たとえば1980年代の液状のシーリング剤などについてだ。

「今回のスキャンダルは、もっと大きくなるんじゃないかと疑っています。結局、1990年代の末以降に建設されたすべての建物に関することですから。」

一軒の住宅が湿気の損傷を受けているかいないかを明白にすることは難しい。計測調査を実施し現時点では何も発見できなくても、カビが壁の中にあるか、将来発生するかどうか分からない。

それにも関わらず、ワン ステップ方式は未だに使用されている。

「私は特別に誰かが悪いとかは言いたくありません。しかし、現在の建築業界のシステムは反応が遅いのです。いくつも建築会社は、まるで何事も無かったかのように今までと同じことを続けており、依然として、不確実ではあるものの、より良い素材のミネラルウールの使用に切り替えていないのです。」と、Ingemar Samuelssonが語っている。

Samuelsson博士は現在だったらワン ステップ方式の採用は許可されなかっただろうと信じている。

Kjell Anderssonはオーレブルーの大学病院の労働と環境医学クリニックの医局長だが、NCCの専門家チームにも所属している。Anderssonによると、湿気による損傷を受けた家に住んでいるからといって病気になった人は誰もいないとのことだ。

「しかし、こういった事実の因果関係をはっきりさせることは非常に難しいことです。私のアドバイスは簡単です。出来るだけ外に出ているようにして、自分の家が危険ゾーンにあるようでしたら家の検査をしてもらうことです。」

NCCの西地方のUlrika Lindmark支社長はNCCに対する批判は不公平だと語っている。

「他の建築会社も皆同じ方式で建築をしています。発泡スチロールのボード(EPS)をモルタルで外装する建築方式を中止し、責任をとったのは我が社だけです。」と、Lindmark支社長は語っている。

NCCのストックホルム地方のFilip Bjurstrom支社長によると、NCCは新築住宅には、発泡スチロールのボード(EPS)をモルタルで外装する方式はとらずに、断熱材としてミネラルウールを使用していると語っている。

「ルンドでの状況が判明した8ヶ月前から変更しました。」と、Filip Bjurstrom支社長は語っている。

FAKTA: シーリング(封印素材)には通風口がない。

  • 10年前に、モルタル仕上げで、水ぬき処置をしない木組みの壁のみをつかう、ワン ステップ方式が人気を得てきた。
  • 壁は、発泡スチロールのボード(EPS)または固めたミネラルウール ボードを直接カートン紙で覆った石膏ボード、プライウッドか木くずで固めた板にはり、断熱されている。
  • モルタルが断熱材に直接吹き付けられている。通風口がつけられない。もし水分が浸透してくると、カビが発生したりバクテリアが簡単に繁殖する。

出典: スウェーデンの技術研究所(Sveriges tekniska forskningsinstitut)

このように湿気による損傷が発生する

  1. 水が釘などの穴や隙間からモルタルに漏れて入っていく。
  2. 通風口がないので、湿気が蒸発しないで内部に浸透する。
  3. 木組の部分が湿気を帯びてくる。カビが発生し、室内環境まで広がっていく。

批判されている壁の構造。

  • モルタル
  • 発泡スチロールボード又はミネラルウール
  • 石膏ボード、プライウッドボード又は木屑を固めた板
  • 防湿シート
  • 石膏ボード
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