Vol.10 スウェーデンからの手紙  認知症に関する簡単な説明書


認知症に関する簡単な説明書



JANSSEN-CILAG目次
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認知症とは何か? : 3-4
異なるタイプの認知症 : 5
記憶の退化 : 5-6
4つの主となる症状 : 6-7
BPSD : 8
家族でいること : 9
介護と医薬品による治療 : 9-10
情報提供 : 11

スウェーデン人は世界でもっとも高齢な人たちになりました。スウェーデンでは,現在約14万人の人々が何らかのタイプの認知症にかかっています。この数字は,もう認知症は国民病であると考えるに十分な数字といえます。2025年度には患者数は20万人以上になるであろうと予測されています。

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認知症とは何か?

認知症を発病した人の脳細胞が破壊されていきます。そのために,記憶障害がおこり,混迷したり,人格が変わったり,また感情をコントロールする能力にも影響を受けることが多いのです。

認知症であるという病名診断をうけることにより,患者は今までとは全く異なった世界に放り出されたように感じるでしょう。認知症という病気については,多くの偏見や憶測が付きまとっています。私達はこの小冊子により,認知症の様々の症状についての情報提供や,症状にどう対処するべきかを伝えることにより,偏見や憶測を打ち破りたいと思っているのです。

あなたが家族であれ,または患者であれ,認知症という病気に関しての直観力や理解力を増すことは,あなたのためにも支えとなるでしょう。

認知症は自然の老化ではないのです。しかし,認知症という病気は高齢の人が発病しやすい病気です。ごく例外的には40歳代の人でも認知症を発病することもあり,場合によってはもっと若い人でも発病することもあります。

認知症とはいくつもの病気を一つにまとめている病名です。記憶喪失があるだけでは認知症であるという診断を下すには十分ではありません。
少なくとも6ヶ月間の間,あきらかな記憶障害があり,さらに以下の症状の最低でも2つがなければならないのです。

* 思考能力の低下:抽象的な思考が出来ない。

* 空間認識能力と見当識能力の退化。

* 言語障害があるために,話し言葉や文章で気持ちを表現しにくい。

* 衣服の着用や衛生管理などの日常生活的な作業が困難。

* 人格の変化。判断力の喪失,自発性を失う,攻撃的,動機の欠乏や自分の家族を無視するなど。

認知症は,病気の重度さにより三つの段階に分けることが可能です。初期の段階は,“軽度の認知症”と呼ばれています。機能能力が低下してはいても,自立して自宅で暮らすことが可能です。次の段階は,“中程度の認知症”と呼ばれており,病人は日常生活に支援が必要となります。“重度の認知症”の段階では,24時間常に見守りと介護が必要になります。

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異なるタイプの認知症

認知症には非常に多くの異なるタイプの病気があります。よく知られており,認知症患者の半分を占める病気はアルツハイマー病です。その次に多い認知症は,脳血管性認知症です。その他の認知症の例としては,前頭葉系認知症,パーキンソン氏病認知症などです。

記憶の退化

認知症の場合は必ず記憶が退化します。しかし,発病した患者が記憶退化によりどのような症状を示すかを前もって予測することは不可能なことです。それは,脳のどの分野が損傷を受けたかにより症状が異なるからです。患者の多くは20年前に何が起こったかについては覚えていても,20分前のことは思い出せないのです。

記憶の退化は,患者が新しい事柄を学ぶことが難しくなったり,言語が貧弱になったり,時間に関連した事柄や抽象的概念を理解しにくくなることにより気付くことが多いものです。

しかし,物忘れが激しい人が全員認知症とは限らないのです。したがって,記憶にトラブルがある人は,意思の診察を受けて認知症の検査を受けたほうが良いでしょう。認知症の検査には,既往歴,精神状態の判定,身体的疾患の検査,“ミニメンタルテスト(MMT)”などによる心理的なテスト,脳神経系統の検査,心臓や肺に関する検査室でのテストなどが含まれています。

そのうちに,患者はさらに記憶能力低下が激しくなるので,昼と夜の区別が付きにくくなったりします。患者は自分の家に住んでいても何処にいるのかが分かりにくくなり,人が誰であるか,一つの物体がなにか分からなくなってきます。病気であるという認識もだんだん無くなってきます。

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四つの主となる症状

損傷が脳の何処にあるかにより異なる四つの主となる症状についてよく話題になっています。しかし,これらの症状の一つだけがはっきりしていることはあまりありません。症状は患者の性格や病気の進行程度により変わって行きます。

右の図により,脳の異なる分野での損傷とその結果何がおこるかを示しています。

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Hjässlob (1)    頭頂葉
Tinninglob (1)   側頂葉
Pannlob (2)     前頭葉
Hjärnbalken    大脳皮質
Nacklob        後頭葉
Lillhjärnan        小脳
Hjärnstammen      脳幹
Ryggmärgen      脊髄

1.頭頂葉と側頭葉の損傷により,言語障害,実際的な作業の実施が困難になり,目で見た印象の理解力が低下することなどが起こりやすくなります。記憶や空間認識能力も多くの場合被害を受けます。

2.前頭葉に損傷を受けると,主として感情面での反応が影響されます。患者は怒りっぽくなります。判断力,自発性や規格能力が減少します。記憶力への影響はそれほど大きくありません。

3.脳の損傷が,脳の奥深い部分に達した場合には,精神状態が悪化してきます。結果的に,混迷状態,筋肉の硬直や鬱状態になったりすることが多くあります。

4.損傷はどこといってはっきり指摘できないものの脳全体が影響を受けた場合には,患者は記憶障害,時間の見当識トラブル,異なる環境で迷子になりやすくなります。


BPSD

BPSDとは,認知症患者の行動的であり精神的な症状の略語です。BPSDの概念は国際的にも認められており,認知症患者の攻撃性,幻覚,妄想,不安や悲嘆,鬱気味,気持ちの動揺,運動性不安や睡眠障害などの症状を含むものです。

これらの症状は病気が進行するにつれだんだん目立つようになります。そのため,患者はますます不安がちになり,敵対心を示したり,攻撃的な行動をしたりすることもあるので,家族はこういった患者への対応に途方に暮れてしまうこともあります。

患者によっては,自分の攻撃性や突発的な行為をコントロールすることが困難になっていますが,こういった患者の症状は認知症患者のケアをしている人はみんな承知していることです。認知症の場合は,攻撃的な行動に大きな影響があるといわれているセロトニンの割り合いが脳内で減少するのです。患者にみられる変化については,殆どすべての場合,理由が説明できるものです。医師の役目は,症状の原因を見出し,適切な医薬品を処方することです。

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家族でいること

認知症患者の介護はその70%が家族により行われており,80歳以上の高齢者が増加するにつれ親族介護者の割り合いは増えてきています。親しい友人の人格的行動が突然変化した場合には恐ろしくなりがちです。しかし,認知症とはどういう病気であるかを理解していれば,患者の行動は理解できるし説明がつくものなのです。

たとえば,認知症の患者は他人が物を盗むと思いがちです。それは,患者が何が自分のもので,何が自分ものでないかがはっきり分からなくなっているからです。

患者には,空間見当識障害があるために,自分の家が分からないので,自分の家を探しに外へ出て行くこともあります。

また,認知症の患者は人の顔を覚えていないので,知人を赤の他人と思ったりします。この思い出せないということがあるので,患者は不安になったり怒りっぽくなったりすることが多いのです。


介護と医薬品による治療

認知症を発病しても,人間としてのニーズを失うということではなく,それどころかその反対のことが多いのです。患者は,落ち着いた居心地の良い環境にいることから喜びを得やすいものです。こういう環境にいると,ストレスの原因となるような状況を少なくし,規則正しい日常生活が送りやすくなります。

ストレスは負担になります。患者は,自分のペースで自分のやり方で何かが出来る場合に最も気分よく過ごせるのです。誉めたり,勧めたり,はっきりと指示したりすると,患者が何かをうまくできることが多いものです。

定期的で順調な睡眠パターンを保つように努力することは良いことです。夜間の飲み物の量はなるべく減らして,就寝時や夜間の照明や雑音も最小限にするようにしましょう。

患者は食事をすることを忘れやすいので,栄養補給は重要なことです。認知症患者への治療とは,優れた介護と場合によっては医薬品による治療をも含んでいるのです。

医薬品による治療は,症状の進行を遅らせ,病気の兆候を和らげることにあるのです。現状では,まだ認知症の治療に効果的な医薬品はありません。

認知症という病気以外にもBPSDの症状がある場合には,この症状を医薬品により治療することが出来ます。鬱病は,主として抗鬱剤で治療します。こういった抗鬱剤には様々の種類のものがあります。

認知症による,原価鵜や妄想,攻撃的など深刻な不安状態にある患者の治療には,今日では利用が許可されている医薬品があります。

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情報提供

アルツハイマー患者の会/アルツハイマー ファンドのホームページ
www.alzheimerforeningen.se を参照して下さい。このホームページでは,会についてのいろいろな情報を提供しています。
JANSSEN-CILAG社が開設している,認知症患者の家族のための緊急電話相談は,月曜日から金曜日まで開いています。08:30~16:30
認知症患者の権利を守る全国連合のホームページは,www.demensforbundet.se で,このホームページから参考文献紹介やより多くの情報を売ることが出来ます。

あなたも連合や100以上もある地域の会の会員になることが出来ます。そうすることで,認知症障害者の社会における権利を守るための活動に加わることが出来るのです。是sN国連合には約1万人の会員がいますが,患者もその家族も加入しています。

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2005年7月 簡訳 by 友子ハンソン

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