目的
建物の高気密、高断熱化により、省エネルギーが達成された一方、 内部結露等(木材の腐食、カビの発生)の問題が生じ始めた。
内部結露が深刻である北海道のような寒冷地では、 木造建物に防湿シートを施すことにより、内部結露防止に役立って いる。
しかし日本は気候の地域差が大きいため、 各工法がそれぞれの地域の気象条件にふさわしいかどうかを確認 する必要がある。
本研究では、木造住宅の壁体内部湿気性状に防湿シートが与える 影響に対する地域差を明らかにすることを目的とし、非定常解析を 実施した。
非定常解析プログラム
非定常熱湿気同時移動解析プログラムヴーフィ(WUFI Pro 4.1 for Japan:フラウンホーファー建築物理研究所)
建築部位の水蒸気及び液水移動、日射および雨の影響を 考慮した上で、非定常の1次元熱湿気同時移動が解析できる 1)
解析条件
- 解析期間 3年間
- 建物向き 南向き
- 建物高さ 10mまでの高さの戸建を想定
- 初期値 各地域平均湿度の各建材の含水率及び平均温度
室内温湿度
室内温度は平均24℃、振幅4℃、 室内湿度は平均45%RH、振幅15%RHのサインカーブに設定した。
最高温湿度は8月15日に示すように設定した。
室内温湿度一覧表
対象都市とその平均温湿度
対象は寒冷地として札幌市、蒸暑地として那覇市、 中間地として東京の3都市とした。
札幌市は平均温度8.9℃、平均湿度71%RH、東京は平均16.1℃。平均湿度62%RH、 那覇市は平均温度22.7℃、平均湿度75%RHであった。
対象都市(札幌市、東京、那覇市)温湿度一覧表 (拡張アメダス気象データをWUFI形式に変換したWUFI搭載データを使用した)
壁体モデル
屋外側から仕上げ16 mm、通気層18 mm、透湿防水層、 合板12.5 mm、断熱材グラスウール (東京、那覇市は100 mm、札幌市150 mm)、 ポリエチレン製防湿シート、石膏ボード9.5 mmとした。
ポリエチレン製防湿シートの有無を比較した。
壁体モデル
各建材の物性値を以下に示す。
各建材物性一覧