含水率の変化
札幌、東京、那覇における壁体全体の単位面積あたり含水率(kg/m2変化(3年分)を示します。ここでは経年で水分の蓄積があるかどうか、つまり上昇していくかどうかを確認します。
札幌、東京、那覇における含水率変化
EPS:ビーズ法ポリスチレンフォームとGW:住宅用グラスウールではどの都市においても含水率が減少していました。
一方札幌ではPU:吹付硬質ポリウレタンフォームで年間約2kg/m2の含水率増加が認められました。したがって、このケースは湿気性状の点から適切とはいえません。こういった結果が出た場合にはより詳しく綿密に検証する必要がります。
建材境界での相対湿度変化
札幌、東京、那覇における建材境界における湿度(%RH)変化(最終年分)を示します。ここでは断熱材とコンクリート躯体間で80%RH以上の高湿を示すかどうかを確認します。
GW:住宅用グラスウール
相対湿度はGW通気層側(通気層-GW)、GWとコンクリート間(GW-コンクリート)、コンクリート室内側において観測しました。
EPS:ビーズ法ポリスチレンフォーム
相対湿度は外装材とEPSの間(外装材-EPS)、EPSとコンクリートの間(EPS-コンクリート)、コンクリート室内側において観測しました。
どの都市においても、通気層-GW、外装材-EPSは外気相対湿度、コンクリート室内側は室内相対湿度に連動して変化しました。
札幌、東京では年間を通して断熱材-コンクリート(つまりGW-コンクリート、EPS-コンクリート)で80%RH以下で推移しました。
一方、那覇では夏季:5月~9月に80%RH以上の高湿度が認められました。(ただし、コンクリート躯体よりも屋外側でカビが発育する場合、健康への影響は無いと言われています。)
このように、これらのケースでは夏に高湿度が認められました。壁体内の高湿度はカビの原因となる場合や条件によっては結露する可能性があります。対策を検討する必要があるでしょう。
(那覇EPS条件下で外装仕上げを変えた場合の検討については後日ご紹介します)
PU:吹付硬質ウレタンフォーム
相対湿度は最外層で外気に接するコンクリート外側、コンクリートと断熱材PUの間(コンクリート-PU)、PUと石膏ボード間(石膏ボード外側)において観測しました。
コンクリート-PUの相対湿度変化を見ると、札幌・東京ではGW・EPSの場合と異なり外気とも室内とも同調せず、冬に湿度が高くなるという変化傾向を示しました。特に札幌では、1年を通して80%RH以上の高い湿度を保ち続け、特に冬季は90%RH近くを示します。したがって、カビや結露の危険性が非常に高いといえます。このケースには対策が必要であると考えられます。
一方那覇では1年を通して高湿になることはありませんでした。このように、地域の気象条件と工法は複雑に関係しあいます。したがってケースごとにシミュレーションを行うことが重要であると考えられます。
投稿者 外断熱コンサルタントのイーアイ: 2006年02月23日|ページの 先頭へ|