Vol. 13 ドイツからの便り Eri通信 「学生を育てる-建築物理を学ぶ学生-」

1年間、シュツットガルト大学の講義に参加して感じたことは、「学生たちは、建築物理を学んでいることに誇りをもっている」ということです。

今回は、一緒の講義を受けた学生と話をしている中で、印象に残っているエピソードをいくつか紹介します。

建築物理の専門家になりたい!

物事を何でもテキパキとこなすミヒャエラは、次のように語ってくれました。

「建築物理学科の学生は、建築物理に関する事柄を一通り勉強した上で、熱なら熱の、湿気なら湿気の専門家になることを目指しているの。建築物理という学問の中には、1000の異なるテーマがあるでしょ。つまり、「建築物理」からまず、「音」「水」「防火」「空気」「温熱」「湿気」「匂い」「化学物質」「衛生」、、、に分かれて、例えば「音」から、「防音」「遮音」「建築音響」「室内音響」「音のシミュレーション」「音の測定方法」「遮音と断熱の関係」、、、、と、まさに末広がりに、様々なテーマがあるの。それぞれのテーマでの専門家になることは、とても価値があることよね。私は「防火」の専門家として仕事をしていきたいと思っているところ。論文の面倒を見てくれる先生が、今まで誰もやったことがない課題を与えてくれて、すごく嬉しい。今後、建築物理はどんどん重要な学問になっていくはず!」と、いきいきと語ってくれました。

妹は建築家志望

のんびりマイペースなベルナダッタ(だったかな?)は、自分は建築物理を、妹は建築設計を勉強しているそうです。それに関して、「妹は設計を勉強しているんだけど、おなじ建物に関する勉強をしていても、ものの見方が異なっていて、よくけんかするの。妹は形にこだわるけど、時々、建築物理的にはふさわしくないのよね。」と、ためいきまじりに話していました。

建築物理とシミュレーション

鼻がツンっと高く、マネキンのような顔立ちのマティアスは、一見、話しかけにくいタイプに思えましたが、語りだすと熱い人物でした。

彼は父親が建築物の性能評価に携わっていることもあり、幼い頃から建築物理と、それを評価するためのシミュレーションプログラムに興味を持ち、趣味でいろいろなものをプログラミングしていたそうです。そんな彼の主張は、次のようなものでした。

「コンピューターを使えば、今ではかなりのことができるから、これからは建築物理の分野でもシミュレーションがどんどん重要になる。特に今までは、いろんな現象を簡易化したモデルで計算していたけれど、これからは、もっと現実に近い状態を計算できる。実際、今ではいろんなプログラムが開発され、市販されているけど、あやしいプログラムも多い、多い。父もいくつものプログラムを却下してきた。一般的にユーザーは、シミュレーションプログラムの結果を過信しすぎていると思う。コンピューターが計算したのだから、正しいはずだ、と。

僕は、建築物理も勉強して、プログラミングもできるから、プログラムが正いかどうかが分かるし、この能力を活かさない手はない。僕はこれから3年間で博士論文を書き、その間に研究所や建築事務所で職業経験を積み、5年後には×○☆◆÷□ 。。。」その後もしばらく、彼の輝かしい将来計画を存分に聞きました。

中国人も頑張っています

余談ですが、私がドイツ語の訓練のために通った語学学校では、トルコ、ブラジル、ウクライナ、オーストラリア、インド、、、など世界中からさまざまな目的を持った人たちが集まっていました。しかし、驚いたことに、約半分は中国人でした。語学学校の大事な連絡は、ドイツ語と中国語で掲示されるほどです。(ドイツ語初級クラスの頃は、中国語の掲示の方がよく分かり、助かりました。。。)

大学の構内を歩いていても、中国からの留学生の多いこと!

建築物理学科にも数人、中国人がいました。ある講義では受講する学生6人のうち、4人が中国人、1人が私(日本人)、残りの一人がドイツ人という、奇妙なクラスができあがりました。教授の最初の一言は、「すみません。ドイツ語でもいいですか?」でした。

ところで、シュツットガルト大学で5年間学び、論文を書き終えて、中国に帰国する直前の学生と話す機会がありました。彼に「中国に帰ったら何をするの?」と聞いてみたところ、「中国でも今は省エネルギー対策が盛んなんだけど、まだまだレベルが低くてね。。。やっぱりドイツの方が建物の省エネルギーが進んでいるし、大学の講義にしたって、中国では教えてもらえないようなことが沢山あったね。だから中国に帰ったら大学教授になって、ドイツのようなちゃんとした「建築物理」を学生に教えたいと思っているよ。」 というようなことを答えてくれました。

学生がそれぞれに目的意識を持って勉強しているので、講義も張り合いがあり、毎回、講義に参加するのが楽しみでした。いい刺激を受けた一年間でした。

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