Vol. 11 ドイツからの便り Eri通信 「学生を育てる-大学の講義-」

今回は、シュツットガルト大学の建築物理学科で行われている講義の中で、私が参加した講義の内容を紹介します。これらの講義はみな、フラウンホーファー建築物理研究所の所長や部長など、実社会での企業とのプロジェクトの経験も豊かで、建築物理の理論を応用して、研究開発に携わってきた方たちによるものだったので、現場での課題や問題点などの話も多く聞くことができ、魅力的な講義でした。

建築構造における建築物理的課題

 

昨今の建築構造の計画には、ドイツでは省エネルギー対策や熱に関する現象に重点が置かれています。それに関して、3次元のシミュレーションによる熱橋部分の熱損失や、熱の移動と関係し、計算が簡単ではない湿気の輸送、また熱および湿気による膨張・収縮なども考慮されなくてはいけません。もちろんその他にも、防火対策、防音対策もよく議論される問題です。

以上のような課題に関して、実際の被害の例の写真を見ながら、なぜそのような被害や間違いが生じたのか、その原因を建築物理の視点から探り、また、現象を解析するための計算方法を演習によって学びました。

断熱と省エネルギー

 

建物における暖房用の消費エネルギーを下げるための技術をテーマとし、消費エネルギーの計算方法や省エネルギー基準の解説がなされました。また、フラウンホーファー建築物理研究所が手がけたソーラーハウス、低エネルギーハウス、無暖房ハウスに関して、どのような技術を用いているのか、その考え方などが紹介されました。また、建設時の問題点やさらなる改善点など、現実的な話もありました。 この講義には、学生に混じって、実務に携わっているような高齢の男性も数人、聴講していたのが印象深かかったです。

建物の湿気対策

建物内の結露やカビの発生、藻類の繁殖による表面の汚れ、鉄筋のサビなどの被害を解明するためには、湿気の輸送を正しく解析する必要があります。そこでこの講義ではまず、湿気の輸送に関してメカニズムを学び、どのような物性値が必要で、どのように測定するのか、を学びました。また、湿気による害を防ぐために、DIN(ドイツ工業規格)ではどのような基準が設けられており、それがどういう理由で設定されているか、を学びました。最後に、カビの発生について、温度や湿度、栄養や時間に関する発生条件および計算方法を学びました。

この講義は、このホームページの主である有限会社イーアイが推奨している、熱・湿気同時移動非定常解析プログラムWUFIで使用されている理論の解説であったと言えます。詳しい理論を知らなくても簡単に結果を得ることができるのがこのプログラムのいいところではありますが、やはり、理論を知っておくと、「どうしてこうなるのか」ということが分かるので、結果の見方も変わると思います。

建築物理の実験

これは、最終学年向きの講義でした。主旨は、今まで学んできた理論や測定技術などを、実験施設で実際に体験する、というものでした。よって毎週、大学の構内から徒歩10分のフラウンホーファー建築物理研究所内の実験施設に通い、研究員の指導を受けました。また、一度は2泊3日の合宿もあり、シュツットガルトから約250km離れたホルツキルヘンにある、屋外実験施設でもさまざまな実験を行いました。

行った実験内容は、「モデル棟における温熱測定<写真1>」「Blower-Door法による、実験棟の気密性能の測定。気密性の欠陥場所の探索<写真2.3>」「湿気物性値の測定<写真4>」「コンクリートから放出されるアンモニア物質の定量<写真5>」「音響実験室における材料の遮音性・防音壁の効果の測定」「擬似太陽光を用いた、照度の測定」「ガラスの透過率・反射率の測定」など、熱・音・光・湿気・空気に関するさまざまな建築に関することでした。

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写真1: サーモカメラで、給湯配管からの熱損失を発見
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写真2: 測定結果の報告とディスカッション
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写真3:  窓枠の角に隙間を発見
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写真4: 各種シートの透湿率の測定
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写真5: 化学薬品を調合
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