ドイツからの便りEri通信 Vol. 1 住宅の”燃費”が分かるエネルギーパス」

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ドイツからの便りEri通信 Vol. 1 住宅の”燃費”が分かるエネルギーパス」

住宅の”燃費”が分かるエネルギーパス

みなさんは、住宅を購入する際に、何を決め手としますか?

ある賃貸住宅に関するアンケート結果によると、(http://www.mizm.jp/enquete/kekka2.html)購入の際に重視する項目は、「間取り(83%)」「価格(77%)」「地域・沿線(71%)」「職場までの時間(42%)」「周辺環境(41%)」、、「セキュリティ(7%)」、と続いている。日々、省エネルギー住宅のことを考えている私としては、「省エネルギー性なんて気にしないのね」と、少々寂しい気がした。

しかし、考えようによっては、住宅雑誌や不動産情報には、省エネルギー性に関する情報が全く載っていないので、消費者も気にすることができないのが現状なのではないか、と思い当たった。もし、この住宅の1年間の消費エネルギー量は○○kWh、こっちの住宅だと△△kWh、と比べることができたら、「この住宅の方が家賃は高いけど光熱費が安そうだ」と考えることができる。車の燃費を比べるのと同じようなことができれば、購入後に「やたらと光熱費が高い」といった不満を持つこともなくなるだろう。

そんなことがヨーロッパでは、2006年1月から可能になる。というのも、2003年に発令されたEU法で、「EU加盟国は2006年1月4日から、建物を新築する際や賃貸を行う場合にはエネルギーパスを掲示すること」が定められたからである。日本では住宅に関して省エネルギーの”指針”や”任意の性能表示制度”があっても、強制力がないことを考えると、なんとも大胆な法律ではあるが、消費者にとってはありがたいことである。

エネルギーパスでは、建物の性能と暖冷房や給湯の設備を考慮して、住宅の燃費、つまり「1年間にどれだけのエネルギーが必要か」ということを示す。しかしEU加盟国には寒冷地のノルウェーもあれば温暖地のイタリアも含まれるため、計算方法などは各国の実情に合ったものがそれぞれ開発された。

ドイツでは、住宅に関しては冷房エネルギーは考慮されない。実際、この1,2年で扇風機がちらほら売られるようになった程度である。我が家にも冷房器具はない。しかしビルなどの冷房が必要な建物については冷房や、室内照明が冷房負荷に与える影響も考慮される。

住宅について話をすすめると、「断熱や気密性などの建物の性能」と「給湯や暖房の設備」の両方が考慮される。日本では建物自体の性能を評価する計算方法はあるが、設備も含めてその建物の省エネルギー性を評価する方法は、あるのかないのか、見たことがない。

また、このエネルギーパス、下の図のように一般の消費者にとって分かりやすく作られている。つまり、「直感的に分かりやすい」ということだ。消費者は断熱の厚さや機器の効率などの細かいことを考えなくても簡単に複数の家を比較できる。このカラーバーの上の大きな矢印はその建物の“燃費”であり、下の複数の矢印は、融資が受けられる省エネルギー住宅の燃費や、新築住宅が満たすべき燃費(条例で定められている)、エネルギーが多く必要な、古い建物の燃費などが記されている。

実は、このエネルギーパスを作成するにあたり、研究所の同僚が計算方法や計算プログラムの開発など、時には活き活きと、時にはイライラしながら議論を重ねて必死で働いていたのだが、そんなことはみじんも感じさせない、親しみやすく分かりやすいものとなっている。

energypass.jpg ▲図:エネルギーパスの一例。
出展:Deutsche Energieagentur GmbH (dena:ドイツエネルギー機構)