新治療方法がサールグレンスカ大学病院でテストされている
数十名のイエテボリ在住の統合失調症患者は世界で初めて食品添加剤を試すことになった。このテストにより患者の記憶と社会的な生活をとりもどそうというものだ。
最初の患者はすでに来年1月から治療を開始する予定だ。最初の段階では、サールグレンスカ大学病院の精神病科病棟の入院患者のうちの数名、最高15名が、この治療のテストグループに属する予定だ。もしこの治療がポジテイブな結果を示すことになれば、統合失調症患者の記憶と社会的に協調していく能力などに影響を与えることが可能となろう。
「現存している医薬品のすべてが、妄想や幻想という症状を示す部分の精神病を治療するという目的のものです。」と、サールグレンスカ大学の薬理学研究所のJorgen Engel教授は説明している。
酸化窒素の量が多すぎる
しかし、統合失調症患者に非常に多い、記憶障害や社会的な疎外感に対する治療方法はない。
「ええ、統合失調症の治療薬に関してはこの50年ほどの間に特別新しい事柄はおこっていません。ほとんどがドーパミンに関することだけです。」と、Jorgen Engel教授は語っている。
現在の試験的な調査は、研究所で発見された事実だが、問題は脳における過剰の酸化窒素の生産が原因であるという、まったく新しい研究による結果を基礎としている。
動物実験では、脳にある過剰な酸化窒素と、新しい事柄を学習することが困難である、物事を思い出しにくい、情報を分別しにくいなどの、様々のタイプの記憶障害との間に明白な関連性が見いだされている。一つの医薬品により、精神病にかからされた動物は、他の動物との関係づくりの欠乏性をあきらかに示している。
脳内での酸化窒素の生産を阻止することにより、動物は正常な脳の機能を取り戻すことが出来た。これらの動物は、すべての記憶テストの結果が向上し、他の動物との関係も正常化した。タンパク質を作っている20のアミノ酸の一つのアミノ酸Lysin(リシン)を使った。リシンは、もう一つのアミノ酸のL-argininに影響を与えることにより酸化窒素の過剰生産を阻止することが出来る。
毎日6グラムのリシンを
リシンは必須アミノ酸と呼ばれるものだが、人間が体内では生産できないもので、食事から補給しなければならないものだ。リシンは、豆類、肉や魚などの特定食品に豊富に含まれている。
「私達はこの物質を信頼しています。私達が理解しているかぎりでは、原則的にリシンの過剰服用は不可能なのです。承知している副作用としては、今回のテストグループの患者の服用量の6倍もにあたる服用量が非常に多い際の腹痛だけです。」と、Jorgen Engel教授は語っている。
リシンは、別の治療の補足的なものとして投与される。記憶や社会的な機能に大きな影響を受けている患者が、このテストへの参加を希望すると思われている。患者達は毎日6グラムの粉末状のリシンを一ヶ月間服用する予定だ。治療を開始する前、4週間の治療終了時とリシンを服用しない期間を4週間おいたのちに、患者達の記憶機能と社会的能力が計測される予定だ。
「もし効果がある場合には、効果はただちに現れるべきです。」と、近々この発見に関する博士論文を発表する予定のカロリーン ヴァッスが語っている。
しかし、今回のテストの結果は、約1年後頃にはっきり判明するものと思われている。
統合失調症:
- 人口の1%程度が発病する。
- 発病は20歳代のことが多く、以後慢性化することが多い。そして、患者は引きこもり、記憶や学習能力に大きなトラブルを抱えることがおおい。
- 発病の原因は不明。
- 精神病的な症状に対する治療医薬品はある。