スウェーデンに学ぶ「持続可能な社会」
朝日新聞社 「朝日選書 792」 定価1365円
05年1月1日、スウェーデンで世界初の「持続可能な開発省」が誕生し、環境省が廃止された。「福祉国家」という人間を大切にする社会のあり方は20世紀的で、21世紀には人間も環境も大切にする「緑の福祉国家」に転換しなければならない、これがスウェーデンの描く21世紀前半のシナリオだ。
今回の改革は、そのための政策の実現をいっそう加速する目的で行われた。
日本のあちこちで、そして、世界で自然災害の報道が多くなっている。戦争やテロ活動は止むきざしがなく、経済のグローバル化はさらに急速に進展している。しかし、たとえ将来、自然災害の発生を予知し止めることができたとしても、戦争やテロ活動がなくなり世界に真の平和が訪れたとしても、私たちがいま直面している環境問題に終わりはない。
「経済のあり方」や「社会のあり方」が環境問題の直接の原因だからだ。
環境問題は世界のほぼ全域に広がった「市場経済社会」を揺るがす「21紀最大の問題」なのである。
21世紀前半のビジョンの相違
小泉首相は02年2月4日の施政方針演説で「改革なくして成長なし」と語り、20世紀と同様に金の流れに注目して「持続的な経済成長」の必要性を明示した。
一方、スウェーデンの首相は96年9月17日の施政方針演説でお金の流れではなく、資源・エネルギーの流れに注目して「緑の福祉国家(生態学的に持続可能な社会)への転換」を掲げた。
20世紀後半に明らかになった「少子・高齢化問題」と「環境問題」は、20世紀の国づくりではまったく想定されていなかった。しかし、21世紀の国づくりでは決して避けて通ることができない最大の問題である。
このことは、「経済規模の拡大」を前提とする日本の21世紀前半の国づくりに大きな疑問を投げかけることになる。「資源・エネルギー・環境問題」が、「50年後の社会のあるべき姿はいまの社会を延長・拡大した方向にはあり得ない」ことをはっきり示しているからである。下図の「持続可能な」という言葉の使い方に日本とスウェーデンの考え方の相違が現れている。
21世紀前半の日本の国づくりを議論するとき、議論を混乱させる2つの指標がある。一つは「少子・高齢化問題」など社会保障制度とのかかわりが深い「国民負担率」(23年前の82年に登場)で、もう一つは「環境問題」にかかわる「環境効率(性)」(01年に登場)である。