Vol.19 スウェーデンからの手紙 アルツハイマーの薬 

2006年3月5日 イエテボリスポステン紙

スウェーデンの研究者達が新しい薬をテストしている
1990年度にはまだアルツハイマー病の治療薬は何もなかった。21世紀に移行する数年前にやっと最初の症状の進行を遅らせる薬の使用が許可され、現在では、スウェーデンの学者達が、アルツハイマー病の進行を遅らせることが出来るかもしれない薬のテストを始める予定だ。

「スウェーデンの医療費のおよそ半分がアルツハイマー病の治療に使われています。」と、ストックホルムのカロリンスカ研究所の研究者であり、医局長のNiels Andreasen医師が語っている。「従って、私達のテストの結果は、もちろん患者にとってもですが、それ以外にも社会経済という面でも非常に重要なことです。」
Andreasen医師によると、スウェーデンのアルツハイマー病に研究は世界的にも最前線にあるとのことだ。カロリンスカ研究所では現在いくつもの研究が同時進行している。その一つは、約半年ほど前から実施されており、ストックホルム市とマルメ市からの患者31名を対象としているそうだ。
「この研究は、患者の腹部の皮膚下に3回にわけて注射により薬を投薬し、患者に免疫体を作ろうというものです。この注射により、健康な脳細胞を窒息させてしまう老人斑(ベータ アミロイドと細胞の屍骸)が結成されるのを防ごうというものです。」と、Niels Andreasen医師が語っている。

他の研究者チームが、5年ほど前に同じような試みをしてみましたが、そのときは、患者が非常にひどい副作用を示したのでテストは中止しなければなりませんでした。今回のテストの結果は期待できそうですが、テストに関する秘密保持が厳しく行われています。
「今日私が申し上げることが出来ることは、期待できるということだけです。副作用に関する問題も発生していません。」
現在は、別のテストが開始され、患者は、老人斑の原因となるベータ アミロイドを結成する酵素を除去する効果のある錠剤を服用しています。
「この両方の試みは非常に興味深いものです。テストの結果が私達が期待するようなものであれば、病気の進行を止めることが出来るからです。」と、Niels Andreasen医師が語っている。
Andreasen医師は、この薬のどちらかはきっと5年から10年以内には薬局で販売されるようになると信じています。

現在使用が許可されている医薬品は、患者の症状を和らげ、脳細胞の死滅による発生する結果を一時的に遅らせるものです。患者は、たとえば記憶が良くなったと感じたりします。しかし、細胞の萎縮を遅らせることが出来るとは証明されていません。
Niels Andreasen医師は、現在使用されている薬にもある程度の病気そのものの進行を遅らせる効果があると信じていますが、イエテボリ市の同僚研究者はこういう効果については懐疑的だそうです。
「まだ、現状では、現在使用されていう薬が病気の進行を遅らせることが出来ると証明した人は一人もいません。しかし、この薬を使用することで、患者にとってもその家族も、より元気になりQOLが向上しているということは判明しています。」と、ムーンダール市のサールグレンスカ大学病院の記憶の外来のミカエル ヨンソン専門医師は語っている。
「その上、現状の薬では約25%程度の患者にはなんら効果がありません。残りの患者は、症状が安定したり、すこしよくなったと感じていますが、病気は常に進行していき、序々に悪化していきます。」と、ミカエル ヨンソン専門医師は語っている。
ムーンダール市のサールグレンスカ大学病院の研究者達は、現在イエテボリ市在住の患者17名を対象として、新しいテストを実施しています。2001年から2002年にかけて、小さな電気的なパルスを首にある神経部分(迷走神経)に直接発信し、以後脳に刺激を伝えるような装置を埋め込む手術が実施された。電流は1日24時間常に5分ごとに自動的に30秒だけ流れるようになっており、研究者達は患者の記憶能力が刺激されることを期待しています。
「この治療は、病気の進行を止めることは出来ないと思いますが、今までのテストの結果、一部の患者の場合は、ある一定の期間にわたって、症状が安定したり和らぎました。」と、
ミカエル ヨンソン専門医師は語っている。
患者達は、まだ記憶の外来での追跡調査を受けている段階だ。

アルツハイマー病
*脳の神経細胞の萎縮がひそやかに進行していく。
*記憶機能が障害を受け、注意力や言語理解能力が低下し、空間見当識が悪化し、表現能力が低下し、計画的に身体的運動の実施が困難になる。
*原因は不明。発病の危険性は高齢になるに従い高まる。遺伝的要素は否定できない。
それほど高齢でない時代からの高血圧は、もう一つの発病の要因だ。
*現時点では、スウェーデンでは約9万人の人々がアルツハイマー病患者で、全認知症患者の約3分の2程度に相当する。

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