Vol.13 スウェーデンからの手紙 住宅事情-02

無為な日々から自分達で何かをする力のある日々へ
2004年4月28日  イエテボリスポステン紙-続き

5年前には、イヤルボー地区は問題で一杯の地区だった。社会から忘れ去られた、すくなくとも社会が忘れたがっていたような郊外のゲットーだった。この地区の住民の86%もが、世界中の85カ国以上もの国々の出身者だった。失業率は70%にも達するものだった。

犯罪の発生率と、住居の広さにたいしての居住者数は非常に高かったが、同時に、児童密度がスウェーデンでも最も高いにもかかわらず、警察、社会福祉事務所、保育園、医療診療所などの公共サービスは最悪だった。

「何らかの組織、行政機関や政治的団体など、1つとしてこの地域の統合化問題には関心をしめしてくれませんでした。住民の間の、スウェーデン人やスウェーデン社会への不信感は大きなものでした。」と、キッキ パーションさんは語っている。 キッキさんは、賃貸住宅居住者協会のプロジェクト リーダーで、丁度こういった時期に、協会より、イヤルボー地区の住民を自分の置かれた状況改善にとりくむようにするプロジェクトを発足するよう依頼されたそうだ。

「私は、恐れており絶望している多くの人達に出会いました。移民者がこのように孤立させられたら、偏見が生まれたとしてもおかしくはありません。この地区の住民は、この地区だけで生活して、外へ出かけることがめったにありませんでした。住民が出会うスウェーデン人は行政関係者か、ほんの数名の隣人だけでしたが、残念ながら、こういったスウェーデン人は自分でも問題を抱えている人達がほとんどでした。」キッキさんは、プロジェクトの基礎的な活動をするソマリア人の女性グループに出会いました。

「このグループの女性達は、強い女性達でいろいろなアイデアデ一杯でしたが、状況を変えるために何かをするだけの権力が殆どありませんでした。あの当時、ソマリア人はイヤルボー地区でも最低の地位にあるグループの人達だったのです。ですから、このグループの人達のステータスを上げるということは特に大きなチャンレンジでした。」

そこで、女性のネットワークが結成され、以後イヤルボーでも様々のことがおこりました。サーガ、ソフィアとハリマはネットワークの最初からかかわってきた。

活動が増し、よりよい団結が生まれました
「キッキがここに来る前は、たいていの人達は自分の家の中だけで暮らしていて、非常に閉鎖的な生活をしていました。仕事についている人は、誰もいないようなものでしたから、子供の世話だけをしていました。ところが、今では、仕事をしていないとか、学習していない人のほうが珍しい状態で、この地区の雰囲気は昔とはまったく違います。」と、ハリマさんが語っている。

この地区の家主のイヤルボー住宅は、最初から女性のネットワークには好意的だった。建物間の空き地を変革して欲しいとなどという女性達の要望はかなえられた。また、地域の賃貸住宅居住者協会も発足し、女性のネットワークは、様々の講演者を呼んでのキャンプ、パーテイ、体操や裁縫や料理などの活動も企画してきました。こういった社会活動のおかげで、異なる人種の間で以前あった緊張関係がなくなった。

「今では、皆がつきあっています。アラブ人だとか、ソマリア人とか、クルド人とか気にしていません。私達はみんなスウェーデン人なのです。」と、サーガさんが語っている。

女性達が苦情を訴えたので、警察の詰め所もいくつか出来たし、昔よりもずっと良い地区の医療診療所もあり、住民のための相談所もできた。さらに、ネットワークでは、スウェーデン語、社会科と民主主義に関する教育もおこなってきた。

「私達はスウェーデンの法律や、権利と義務について、スウェーデン人が知っていなければならない社会のシステムについても学びました。」と、ソフィアさんが話してくれた。

犯罪率が減少した
こういった環境にまでに達する過程で、女性のネットワークは、法律に違反するうしろめたいような活動を発見し解体させてきた。たとえば、違法の法律のアドバイス組織の表面化したときは国内の各新聞で大きな話題になった。この組織では、この地区に住む移民者の弱みにつけこみ、スウェーデンにすむ人達の当然の権利であり、無料で受けられる医療ケアや助成金をもらえるためのアドバイスを有料でしていた。イヤルボー地区での違法事業が発覚したのちに、同様な事業が国内の大都市周辺には他の場所でも行なわれていることが判明したので、こういった事業は閉鎖させられた。しかし、同時に、残念なことに女性のネットワークの会員も恐喝をうけ、一人の女性は鉄棒で殴られひどい怪我をしたこともあった。この暴力事件は殺人未遂扱いにされた。しかし、犯罪組織などからの恐喝だけが、女性のネットワークの会員に、以前にもました創造力を発揮させるようにしているのではない。

「スウェーデンの官僚主義も最悪です。人種差別ややる気のなさには本当に恐ろしくなります。しかし、抵抗に出会うたびごとに、女性達はもっと頑張ろうというパワーをえてきました。」と、キッキ パーションさんは語っている。

「行政との会議の前には、キッキにもベールを被らせたらどうなるだろうと冗談を言い合ったものです。そうすればどうなるだろうかなどと想像しあったものです? そうすれば、キッキを無視して、私達と話しをしてくれるでしょうか?」と、同じようなプロジェクトをビスコープスゴーデン地区で発足させるためにキッキさんが移動したので、このイヤルボー地区のネットワーク事業を運営しているハリマさんが話している。


(写真の説明)
ソフィア ヨウスフさん、サーガ アブデルさん、ハリマ アブデさんは、イヤルボー地区での活動をしている女性達のなかでも最も積極的な3人だ。賃貸住宅居住者協会のキッキ パーションさんと一緒に、この3人は地域改革に成功した。不信感、無力感やあきらめの気持ちを頑張って活動する喜びや熱意にかえたのだ。この地区の住民は、皆が一緒に頑張れば変革ができるということを学ぶことができた。キッキさんは、同じような活動を発足させるために、ビスコープスゴーデン地区に移動したので、女性達が今では自分達でネットワークを継続して運営している。

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