Vol.1 スウェーデンからの手紙  ボランテイアが活発に活動している

スウェーデンの福祉

 スウェーデンは、かなり以前から高負担高福祉政策をとってきています。しかし、この数年高齢者数が大幅に増加し、さらに少子化傾向が強まるにつれ、高福祉政策の推進が懸念されるようになってきました。

DSC08329.JPG▲2005年11月14日茅野市民館にてグループホームの説明を行う筆者

 スウェーデンでは、通常子供は成人すると親元を離れて自立し、数世代が同居している家庭は非常に少ないものです。しかし、それにもかかわらず、以前から高齢者ケアの70%もがインフォーマルケアと呼ばれる親族ケアにより実施されているのです。もちろん、高齢の夫または妻が自分のパートナーのケアをしているケースが非常に多いのも確かですが、同居していない子供達がさまざまの形で高齢の親を援助しています。

 2000年度の社会庁の調査によると、75歳以上の高齢者の51%が自分の子供は15km以内の距離に住んでいると答えています。しかも、子供のいる人達の殆どが、公共ヘルパーからよりも子供から支援を受けているのです。(子供から 36%。 ヘルパーから19%。)

 スウェーデンも今までにないほど多くの高齢者を抱え、厳しい財政に直面し、ボランテイア活動を積極的に奨励せざるを得なくなってきました。もちろん、青少年のスポーツ活動などは全面的にボランテイアにより運営されているといっても過言ではなく、キリスト教徒が圧倒的に多い国ですから、以前から教会を中心にしたボランテイア活動は盛んに行われてきました。しかし、現状が今までと違うことは行政が積極的にボランテイア活動を推進していることです。

 イエテボリ市内21の行政区の殆どで、行政が主になったボランテイア活動のネットワークが結成され、多くの場合元気な年金生活者が、有料または無料で、支援を求める人たちの要望に答えています。

 ボランテイアネットがすでに充実している行政区のひとつでは、コンピューターを利用し、ウェブサイトで、支援を希望する人と、支援をしてもよいと考える人をマッチさせ“仕事”を斡旋しています。それ以外にも、区役所内にボランテイアの人達の集まる部屋も用意しています。この行政区は、希望者は無料でボランテイアの支援を受けられるようにしていますが、ボランテイアを利用できる人達は、ホームヘルプサービス部門から援助を受けている人達と限定しています。

 また、この行政区の特徴は若い人たちのボランテイアが多く、ボランテイアの平均年齢が34歳ということです。ボランテイアの多くは女性で、ここでも80%が女性です。“仕事”の内容は、学童の宿題の手伝い、高齢者福祉部門での支援、機能障害者への支援、犬の世話などで、犬の世話や子供にかかわる“仕事”が人気の“仕事”です。このネットワークには、70名以上のボランテイアが登録しており、長期間または一回かぎりの、20種類以上の様々の“仕事”をしているのです。

 こういったボランテイアの一人の男性は、年金生活者になって手持ち無沙汰でいましたが、妻に進められ、2人ともボランテイアとして登録したそうです。区役所の斡旋事務所で仕事の斡旋を受け、要望している家庭を訪問しています。男性ですから、どうしても一人暮らしの高齢の女性が自分では出来ないような、壊れた電球をとりかえたり、カーテンレールを取り付けたり、絵画を壁にかえたりといった実用的な仕事が多いそうです。しかし、それよりも、一人で寂しい思いをしている高齢者が多いので、世間話しをしたり、一緒にお茶を飲んだりすることが非常に多いそうです。

 スウェーデンでは労働組合が大きな力をもっているために、こういったボランテイア活動はあまり発達していませんでした。労働組合はボランテイア活動が活発化している現状には大きな不満と不安を訴えているのも事実です。組合は、ボランテイアが増加することで、“有給の労働の場”が縮小すると恐れているのです。

しかし、スウェーデンの公共福祉だけでは、まかないきれない部分の“心のケア”などがボランテイアの役目になってきたようです。

(雑誌"ゆたかなくらし"2005年11月号に掲載)
2005年10月1日   友子 ハンソン

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