Vol.58 スウェーデンからの手紙 歯がよければホームレスの人達にも新しいチャンスになる

2007年3月15日 スヴェンスカ ダーグブラーデット紙

歯、または歯がないことが、落伍者で疎外者であることを示す一つの社会的な烙印となっている。ホームレスの人達への歯科治療は、自分に自信をつけ、場合によっては社会復帰への一つの鍵なのだ。

歯根の残り、痛みをともなった炎症、歯茎が露出している、グラグラしていて、壊れた歯。食事をとるのが難しくて、長いこと口を開けて笑ったことのない人達。歯科医で研究者のPatricia De Palma(パトリシア デ パルマ)の患者の中では、こういう人達が例外ではなくてあたりまえだった。パトリシアは、ストックホルムのホームレスの人達との歯科治療に関して博士論文を提出したところだ。

「最初の頃は、歯には非常に重要な意味があるので驚かされました。多くの人達が地獄の真っ只中で生きているのに、それでも自分の外見を気にしているのです。歯の治療が、自分の状況をなんとか変えようという努力の後押しをすることになったのです。」

スヴェンスカ ダーグブラーデット紙は、パトリシアとカロリンスカ研究所が2002年に、国内で初の特別にホームレスの人達を対象とした歯科診療所を開設したと記事にしたことがある。診療所は、スーデルマルム地区にあるホームレスの人達を対象としたランスチング(公共)の初期診療所のHallpunkt Maria(ホールプンクト マリア)に隣接している。

パトリシアは、この診療所でいままでに約1000名のホームレスの人達の治療をしてきた。147名が女性と男性については、丁度完成したばかりの博士論文に記録し、インタビューによる追跡調査をしてきた。

その一人が、Anders(アンデッシュ)52歳だ。アンデッシュがパトリシアのところに初めてやってきた時にはたった9本しか歯が残っていなかった。

「きちんと服装を整えて、仕事の面接にいっても、口に歯がなければなんにもなりません。普通ではないのですから、濫用患者だということがすぐ分かってしまいます。」と、アンデシュは認めている。

アンデッシュは、パトリシアが知っている社会復帰が非常に成功した数十名の人達の一人だ。アンデッシュは、ずっと昔に仕事とすむ家を失って、トイレやホームレスのための仮収容施設に寝泊りしていた。麻薬や犯罪は日常沙汰だった。

ところが、今では家族もいるし、きちんとした職業にもついていて、中小都市にすんでいるが、もう麻薬に手を出さなくなって5年になる。

「入れ歯を作ってもらってから、思い切って人と口を聞くようになっていろいろな人達とあうようになったのです。歯が自分に自信をもつということにはすべてでした。」と、アンデッシュは語っている。

パトリシア デ パルマは、短期間でも麻薬を使用しないことは、当人にとっても社会にとっても大きな利益なのですと語っている。多くのホームレスの人達にとっては、パトリシアやホールプンクト マリアとの出会いは、初めて久しぶりに一人の人間として尊敬を受けて接しられるということだ。汚らしくても、臭くても酔っ払っていても診療所では受付てもらえるのだ。

殆どの人達が歯医者に行かないのは経済的な理由だと語っている。パトリシア デ パルマは、口内が身体の一部とみられないので、歯科治療費は、より多くの部分が保険によりカバーされている医療費の分野に含まれていないことに批判的だ。

「私が、クラウンをつかう歯根治療やブリッジの費用見積もり書を社会福祉サービス部門におくると、回答はきまっていて歯を抜きなさいです。ということは、体の一部を切断するようなものですが、その方が費用が安くすむのは確かです。」と、パトリシアは語っている。

以下は記事写真の説明

Carina(カリーナ)57歳は、下あごには5本しか歯が残っていない。歯をなおして炎症がおさまったら、総入れ歯にしてもらう予定だ。昨年、カリーナは、上あごに総入れ歯を作ってもらった。カリーナは10年前からホームレスだ。新しい歯ができると、自信がつくので、もう大人になっている息子達とまた会えるチャンスが出来るだろうとカリーナは語っている。歯科医のパトリシアは、同僚のCecilia Nilsson(セシリア ニルソン)の援助を受けている。

FAKTA

歯科治療には経済が障害になっている

  • 調査にかかわったホームレスの人達の約91%強が歯が痛いために食物を噛むのに困っていた。
  • 94%近くが経済的な理由で歯医者には行っていなかった。70%は歯科医が怖かったからだ。
  • 67%強が歯ブラシを所有していなかった。
  • 92%が麻薬の濫用患者だった。
  • 調査にかかわったホームレスの人達のうち4人に1人が女性だった。最年少者は22歳で最年長者は77歳だった。
  • 約17800人の人達がスウェーデンではホームレスだ。社会庁によると、そのうち約3900人がストックホルムに住んでいる。
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